Mar,02,2011

フィッツロイを大満喫して、次はペリト・モレノ氷河を見るためにEl Calafate(エル・カラファテ)へ向かう。
これから走るエリアは西風が強いことで有名で、サイクリスト泣かせのエリアでもある。
テントを張ろうと思ってもテントと共に飛ばされそうになっただとか、野で用を足すのが大変だとか、そもそも自転車が全く進まないだとか、怖い話をいっぱい聞いてきた。
あいにく私たちがエル・チャルテンを出発する前夜から風がいつもより強く吹いてきて、夜な夜なテントがバタバタバタとうるさくしなっていたくらいだった。
朝も変わらず強風。
最初の90kmは東へ向かうので、追い風になって嬉しいのだけど、
その先は南下して最後は西へ向かうので、横風や向かい風がどれだけ酷くなるのか心配でたまらなかった。

最初の90kmは見事に時速30kmで走り続けてあっという間だった。
ほとんど力を入れていないのにペダルが面白いほどクルクル回る。
舗装路を走ること自体が1か月ぶりくらいで、こんなにスムースにタイヤがまわる事にも驚きを隠せなかった。
「ねえねえ、このタイヤ摩擦で焦げちゃわない?」なんてアホなことを言ってひろに笑われた。
だってこんな速さで道路とタイヤがひっきりなしにシュッシュシュッシュと接しているのなんて、
ほんと久々だったんだもの。
ずっと美しいフィッツロイを背にしながらスイスイと泳ぐように進む90kmの楽しかったこと。
時折写真を撮るために後ろを振り返ると、透明の壁にぶつかってしまったかと思うほどドーンドーンと風にぶつかる。
ひょえー、この風、敵にまわしたくないなぁ。


100km先からもフィッツロイが見えた。右端にちょこっと見えるのがそれ。

そしてとうとう南下する分岐にやってきた。
90km走ったし、とりあえず休憩と思ったものの休むところがないことに気がついた。
分岐を右折したとたん、今まで味方だった風がゴォーゴォーとサイドから襲ってくる。
やっとのことで風除けになりそうな穴をみつけて休憩。
ま、これは予想していたこと。
急いで漕ごうと思うとイライラするのだろうけど、スピードがでないことも分かっているし、今日はどうせ野宿だし、進めるところまで行けばいいのだ~と楽天的に進んでいた。

だいぶ打たれ強くなったものだなぁと思う。
一昔まえだったらこのレベルの強風向かい風に凹んだし、雨が降ればテンションが下がり、未舗装路があるとブゥブゥ文句を言っていた。
でもパタゴニアに来て爆風を体験して、毎日レインジャケットを着るのが当たり前になって、毎日が未舗装路という日々を過ごしていたら、なんだか大らかになった。
苦しいこと、大変な体験は人を強くする。
楽しいことのほうがもちろん大好きだけど、辛いこともまた楽しいことを増やしてくれるちょっとした寄り道なんだと思う。


横風に注意マーク。

なーんてしみじみしながら向かい風と戦っていたら、ふと足取りが軽くなってきたことに気がついた。
あれれ、風が止んでない??
まわりの植物はおもしろいくらいに首をクタっと横にしているけど、
これはどうやら今日の風ではなくて、普段の強風によってついてしまったクセのよう。
やはり木が横にヘニャッと曲った絵が書いてある、横風注意の看板がところどころにあって、
ここが強風地帯であることは間違いない。
それなのにパタッと風が止んでいて、時速20km以上出せている。
さっきまでの強風は何処に?

どうやら私たちは本当にラッキーだったようで、強風横風を受けたのはたったの5kmくらいで、
エル・カラファテまでほぼ無風の中走り続けることができた。
この先も強風地帯は続くから、いつかは対峙しなくてはならないのだろう強風向かい風。
とりあえずは逃げ切り、ホッ。
できればずっと逃げ切りたいんだけどな。


強風で有名なアルゼンチンのルタ40(国道40号線)。見事になんにもない道。強風から逃れるところも無し。


のどかなキャンプサイト


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