Feb,18,2011

エル・チャルテンは観光客のためだけに造られた様なつまらない町。
人よりも動物の方が多いカレテラ・アウストラルから来た僕らは、
この町の人の多さにショックを受け、若干引き気味になったりもしたのだが、
でもここは世界中の旅人の憧れ、フィッツロイへの起点となる町だ。
観光客が多くても、街並みがつまらなくても、多少物価が高くても、そんなことは大したことではない。

フィッツロイは、ロス・グアシアレス国立公園内にあるパタゴニアを代表する山だ。
雲に隠れがちでなかなか全貌を現さないことで有名なフィッツロイだけど、
ようこの神がかり的な晴れ女ぶりのお陰で、ここしばらく快晴の予報が続いている。
これはのんびり休憩している場合じゃない。
早速3日分の食料を買い込んで、いざ、フィッツロイへ。

国立公園に入って1時間ほど歩くと、フィッツロイを真正面から望める展望台(ミラドール)に到着した。
そのミラドールに近づいた僕らは、息を飲み、言葉を失い、口をポカンと開けたまま、その場に立ちすくんでしまった。

何なんだこの山は。


誰もが無言でフィッツロイを見つめていた。

カッコよく、美しく、威風堂々と、誰にも媚びることなく、圧倒的な存在感で、彼はそこに存在していた。
神がかった姿とでも言えばいいのだろうか。
どうやってその時の衝撃を言葉にすればいいのか、未だに分からない。
一緒に登ってきた友人は、”I’m shocked.”と言っていた。
残念ながら、どれだけ言葉や写真を並べても、その存在感を表現することは僕らにはできそうにない。
とにかく凄い。凄まじいのだ。
期待満々で登ってきたけど、こんなにすごいなんて。

トレッキング初日はフィッツロイの麓にあるキャンプ場で泊まる。
無料のキャンプ場なのに、ちゃんと整備されてとても快適なキャンプ場だ。
そして何より、もう夕方だというのにフィッツロイには相変わらず雲ひとつ掛かっていない。
フィッツロイの全貌をゆったりと眺めながら食事を準備し始める。
なんて贅沢な時間なんだ。


夕飯を準備しながらフィッツロイを望む。

翌日、夜明け前に起きて、ヘッドランプの明かりを頼りに山を登りだす。
このキャンプ場から1時間ほど登ると、Lago de los tresというフィッツロイを間近に望めるビューポイントがあるのだ。
ここまで来ておいて、朝日に輝くフィッツロイを見ないなんて手はない。
意外と急な登りに苦戦しながらも、なんとか朝日の前に到着し、そこで朝日を待つ。

やがてフィッツロイが朝日を浴び、赤く、赤く、燃え始めた。


言葉なんて何の役にも立たない瞬間。

その朝の出来事を言葉で表現するのは、もはや不可能だ。
今でもその朝の光景を思い出すだけで、心が震え、涙が出てくる。
一生忘れることができない朝。

ありがとう、フィッツロイ。


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