カレテラ・アウストラルの旅が終わった。
期待していた道だったけれども、こんなに素晴らしい日々を過ごせるとは思ってもいなかった。
毎日美しい景色の中走る。
氷河や滝や山や森は文字にしてしまうとみな同じなのだけど、毎日出会うそれらはひとつひとつ雰囲気も違っていて、1200kmという距離の間毎日違った大自然の美しさを見せてもらった。
走った全ての区間の自然の違いをはっきりと伝えられるくらい、
バリエーションに富んだ景色の中を走って来た1か月だった。
タジキスタンのパミール高原で一緒に走った、3年間世界を走っているサイクリストのロイが
「パタゴニアはもっとスゲーんだぜ。毎日がWOW!なんだ。何千キロもずーっとWOW!なんだ。」
って鼻息を荒くして言っていたのを思い出す。
まだパタゴニアの一部が終わっただけだけれども、
ここはとんでもなく素晴らしいところだということをひしひしと感じる。
そしてその素晴らしさを十二分に味わう事ができる自転車旅にして本当によかったと心底思う。
一度通り過ぎてから再び戻ってカメラを構えた。「あれ、今のすごく綺麗だったよなぁ。」
水彩画のような柔らかい色が美しかった。
カレテラ・アウストラルは世界一美しい林道との呼び名も高い。
こんなにも長い距離の間中ずっと美しく、バリエーションに富んだ自然を持つ道は世界中を探したって多くはないはずだ。さらにここは人口密度も低く人工物も少ない。
悪路ながら道はある。村の数は少ないけれども、それでも100km毎には小さな集落があって何かしらは買える。美味しい水がいつでも手に入るし、どこでも安全にテントを張ることができる。
間違いなくここは世界一自転車で走っていて楽しいルートに違いない。
カレテラ・アウストラルは毎日雰囲気が変わる素敵なルート。
カレテラ・アウストラルを走りだした第一日目に出会った、カレテラ・アウストラルを北上してきたスペイン人サイクリストが「本当に最高だったよ、カレテラ・アウストラル。」
と両手の親指をあげて大きくグッドサインを突き出してニカっと大きく笑った。
そのビッグスマイルが何度も何度も脳裏に現れる。
初日より1週間後、1週間後より2週間後、そして終着点ヴィラ・オヒギンズの村に着いて、よりこのビッグスマイルの意味が分かる。
そう、カレテラ・アウストラルは間違いなく誰もをとびっきりの笑顔にさせる道で、
誰もが美しい思い出を一生語り続けてしまうような道だ。
イタリア人サイクリスト、ディノ。私たちがイメージする、これぞイタリア人という感じの陽気で元気な兄ちゃんでした。
スペイン人サイクリストのプラドが言っていた。
「私はオヒギンズで無性に泣きたくなったの。だってね、もうカレテラ・アウストラルが終わっちゃったのかと思ったらね、寂しくて寂しくて。」
誰もが終わってしまったそばから恋しくなってしまう、そんな道。
本当に最高の道でした。
シアワセの日々をありがとう。
「今日は私の62歳の誕生日なの!」元気な可愛いフランス人のご夫婦。私たちもこんな60代になれればいいなと思う。
村中の歩道が全て木で出来ていて、車が通ることができない不思議な村、トルテル。
テントの横でコツコツ音がするなぁと思ったら、こんなに美しいキツツキがいた。