Jan,19,2011

プエルト・モンからチロエ島を経由して、ついにカラテラ・アウストラルにやって来た。
チリ側パタゴニアを南北に貫く全長約1200kmのこの街道は、手つかずの大自然を間近に見れる美しい街道としてチャリダーにはとってもに有名で、チャリダーの聖地といってもいいような街道だ。
街道のほとんどは未舗装路だし、意外とアップダウンも多くてなかなかハードな行程なのだけど、
こここそ、パタゴニアで一番走りたかった街道。
しかもこの地域は雨が多くて有名なのだけど、僕らが出発する日は見事なまでの晴天。
もともと高くなっているテンションが、ますます上がっていく。

とりあえずの目標地点は、約420km先のコジャイケという人口5万人弱の街(それでも地域最大だ)。
そこまでのんびりと7日もかけて、カラテラ・アウストラルを満喫してきました。


まさにこぼれ落ちてきそうな氷河。

天気にも恵まれた前半戦、この街道は期待通りの素晴らしさだった。
この道にはシアワセしかない。
足を動かしているだけで、毎日どんどん景色が変わっていく。
美しい雪山が並んでいるなぁと思っていると、それが今にもこぼれ落ちそうな巨大な氷河だったり、
滝百選どころかベスト10に余裕で選ばれそうな豪快な滝があちらこちらに流れていたり、
カリブ海かというほどマリンブルーな色をした川のほとりでノンビリ昼ご飯を食べてみたり、
そうかと思えば、ものすごく深くて透明な青色をした湖が現れたり、
どんなアーティストも思いつけないんじゃないかというほど芸術的なシェイプの岩山が並んでいたり、
時には道端に野うさぎがちょろっと姿を現してくれたりもする。


嘘みたいなマリンブルー色の川。

そして、こんな大自然に囲まれた僻地にも関わらず、とても楽チンな旅ができるのも嬉しい。
一日1回は小さな集落を通るのだけど、そこには必ず小さい商店があって、その商店の棚には旅に必要な食糧が十分に揃っているので、食糧の心配は全然しなくていい。
あちらこちらに美しい川が流れているし、水道水だって飲めるので、水を沢山持ち運ぶ必要もない。
毎日のようにキャンプ場はあるし、ブッシュキャンプだって全然問題ないし、キャンプに疲れたら宿で快適に寝ることだってできる。
さらにはキャンプ場や宿に泊まればホットシャワーだってあるのだから、もう至れり尽くせりだ。
治安も問題ないし、警察だって親切で、もちろん賄賂なんて要求してこない。
未舗装路とはいえちゃんと整備された道なので、タジキスタンの悪路などに比べれば全然大変じゃない。
余計な心配をせず、ただせっせと足を動かしているだけで、手軽に秘境級の大自然を満喫できる。


カラテラ・アウストラルは世界一美しい林道とも呼ばれている。うん、間違いないかもしれない。

そしてここ南米は今が真夏なので、日照時間が15時間近い。
だから朝はノンビリ起きて朝食を作り、テントが乾くのを待って出発。
道中は絶景ポイントでコーヒーを入れてみたり、たっぷり昼休憩を取ったり、時には昼寝をしたり。
夕方も焦ることなくノンビリ野宿できそうな場所を探して、冷たい川にザブンと飛びこんで汗を流して、
それから洗濯したりして、それでもまだまだ明るい空の下、ノンビリと夕食を作る。
夜10時くらいになるとようやく暗くなってくるので、直前の村で買ってきたワインを片手に、一緒に走って来たチャリ仲間とキャンプファイアーを楽しむ。


心が洗わるような景色の連続。

この街道は、天気さえよければ、ああ自転車旅って楽しい!という要素ばかりが揃っている。
とにかく毎日が楽しい!、美しい!、楽しい!、美しい!の連続だ。
これこそ、絵に描いたような理想の自転車旅生活。
こんなに簡単に幸せな日々を手に入れちゃっていいのかしら?

あ、でもひとつだけ。
この幸せっぷりからしたら小さなことだけど、
この地域には12月から1月にかけて、タバーノ(HorseFly)というハエそっくりのでっかいアブが大量発生する。
こいつらがブンブンとうるさいだけじゃなくて、容赦なくブスブスと刺してくる上に、とても痛い。
もうウットオシイったらない。
ここまで“もう絶滅させたろか!”という強烈な殺意を覚える生物もそうそうない。
しかも晴れてスカッと気持ちいい日ほど大量に発生するタバーノ。
こいつらさえいなければ、楽園中の楽園なのに。


蜂サイズの巨大アブ。写真に写っている姿を見るだけでムカツク。


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