Nov,03,2010

グルジアは今、観光化を急ピッチで進めていて、その街並みを急速に変えつつある。
首都トビリシには19世紀の可愛らしい旧市街が残っているのだけど、
その旧市街ですら朝から晩までガンガン工事をしていて、いたる所に厚化粧を施している。
まだ修復がされていない辺りを歩くと、いい感じに古ぼけた家の奥の方で洗濯物が干されていたりして、とてもいい味を出しているのだけど、修復された後の家々は妙に真新しくて何となく窮屈に見える。
夜に美しくライトアップされた姿なんて、これからエレクトリカルパレードでも始まりそうな勢いだ。

ある日、スィグナギという村に一日観光に行ってきた。
ガイドブックには17-19世紀の街並みが残ると絶賛されていたので期待しながら行ったのだけど、
乗合バスを降りた瞬間に、二人とも固まってしまって言葉が出なかった。

新しい・・・


とても綺麗だけど、19世紀の街並とは言い難い。

2007年に政府が全面的に復旧したという街並みは、まるで数年前にできた新興住宅街というか、ディズニーランドの街並みというか、とにかく何もかもが真新しくて生活感が全くない。
村の人たちも、どことなく居場所がなくて落ち着かない様に見えてしまう。
たしかに遠目から見れば美しい街並みにはなっているのだけど、これはさすがにやりすぎだ。
これじゃあ、わざわざグルジアの田舎街まで足を運ぶ必要がないじゃないか。

こういう観光地っていうのは、本当に難しい。
復旧しすぎるとウソっぽくなるし、放置すると汚らしくなってしまう。
何度も塗り直したボロボロの壁を見て感激する人もいれば、それを汚らしいと感じる人もいる。
歴史のある街並みは趣があるけど、住民にしてみれば住みにくくて面倒なだけかもしれない。


山間部の村メスティアでは、急ピッチでスキーリゾートを建設中

僕らが好むのは生活感がたっぷり溢れていて、何世代も人が住んできたんだなあという歴史を感じさせる街並みなのだけど、観光客の中は真新しく化粧を施された街並みを好む人だっている。
それに、そもそも古い街並みを求める僕らだって、その街にATMやコンビニやレストランといった近代施設がないと不便で不満に思うこともある。
だから、こういう観光地化を進めている真っ最中の街に来ると、この街にどうなって欲しいと思っているのか、自分でも分からなくなる。


トビリシの旧市街。街中はまだいい雰囲気が残っているので、そのままにしておいてほしい

トビリシやスィグナギのように観光地化されすぎた場所にダメ出しをしては、
まだ観光地化され切らず人々も素朴で観光客ずれしていない、そんな“穴場の観光地”を求めさまよい、
そんな場所を発見してはそこを次々とスポイルしていく僕ら観光客。
ああ、観光客ってわがままだ。


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