Sep,07,2010

川の水を飲み、川の水で体を洗い、川の水で洗濯し、川の水で料理をする。
こんなに川の水を多様したのはタジキスタンが生まれて初めてだ。
タジキスタンには37日間滞在したのだけど、テント泊はなんと26日だった。
これぞ自転車旅というか、アウトドア三昧というか、
それはそれは川にお世話になる日々だった。

山だらけのタジキスタンは水が豊富。
自転車で走っていると冷たくて綺麗な水が流れる小川にちょくちょく出くわす。
その都度停まっては、頭やシャツを濡らしてリフレッシュする。
乾燥していて日差しも強いので、びしょびしょに濡らしても10分もすれば
カラッカラに乾いてしまう。
濡らして走ると気化熱で冷えて気持ちがいいから、
時にはザブーンと服のまま全身水浴びをすることもある。

自転車で旅をしているというと、浄水器は必須でしょ、とよく聞かれるけど、
約2年間色々なところを走って来たけど、浄水器を使ったことはなかった。
色々な旅人がいて、いろんなスタイルがある。
現地の人が飲んでる水ならそのまま飲むという人もいるし、
浄水器を使っている人もいるし、
ボトルウォーターを買っている人もいる。
私たちは少しお金がかかっても、生で飲む時の水はボトルウォーターにしている。
そしてこの2年間、ボトルウォーターを何日も買えないような状況になったことはなかった。

が、タジキスタンに来て状況が変わった。
なんと首都や大都市以外ボトルウォーターが手に入らない。
つまり何日間も、時には一週間以上もボトルウォーターに出会えない。
みんなゴクゴクと小川の水を飲んでいる。
綺麗で冷たくて流れもあって、ミネラルウォーターのCMに出てきそうな小川の水はもちろん、
濁っていて、何やら色々と混入している小川の水であっても、
現地人はゴクゴクと飲んでいる。
たまに蛇口つきの共同水道が道端にあるけど、どうやら小川とホースで繋いだだけのようなものだ。
彼らにとって飲めるか飲めないかの判断基準は何なのだろうか。
枯れてしまっている小川もいっぱいあったし、水道があっても出てこないこともよくあった。
手に入る水をありがたく頂く。
それだけのことなのかもしれない。

とはいえ、衛生状態は大丈夫なんだろうか。
首都ドゥシャンベくらいでは存在しているのかもしれないけど、
水道局が水を管理して、消毒してといったようなシステムはなさそう。
それどころか小川のまわりには牛や羊が所構わず糞尿を垂らしているし、
田舎では家畜だけではなくて、人も川の周辺でトイレをしている。

衛生状態は心配でも、水を飲まないわけにはいかないし、
どうせチャイ屋で出てくるチャイだって、小川の水なんだから仕方ない。
そんなわけで毎日せっせと煮沸したり浄水器を使ったりして飲料水を作っていた。
混入物が多い時には繰り返し使えるコーヒーフィルターでフィルタリングしたりして。
ドゥシャンベに着いた今も、ついついドブに流れる水が綺麗かどうか確認してしまったりする。
「あ、これくらいなら飲めるかも」、なんて思ったり。

川の水なくしては生活出来なかった1か月だった。
水がなくては人間は生きれないということを強く感じた1か月でもあった。
当たり前のことなんだけど、
身をもって感じることでやっと実感が湧く。
そしてまた蛇口をひねると水が出てくる生活に慣れると、
水の大切さを忘れていく。
なんて愚かなんだろうね、人間って。


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