タジキスタンに入って、またお腹を壊した。
中央アジアに入ってから、かれこれ3度目だ。
しかも今回は赤痢だったようで症状は重く、ためしに体重を測ったら7kgも痩せていた。
たった2か月間で体重が1割以上も減ってしまったことになる。
恐るべし、中央アジアの夏。
でもラッキーなことに首都ドゥシャンベで発症したので、英語を話す医者にかかることもできたし、
お腹が治まった後は韓国料理屋に通いつめて急速に体力を回復することもできた。
こういう時は都会ライフさまさまだ。
そして体力の回復を待ち、自転車をジープの荷台に載せて一気にパミール高原の玄関口ホーログまでやってきた。
パミール高原。
旅の計画を練っていた時には、パミール高原なんて聞いたすらなかった。
それが今から1年前、アフリカで出会ったサイクリストにパミール高原の話を聞いてから、
タジキスタンにある標高4000m超の高原は、一気に僕らの夢の舞台の一つになった。
キルギスの暴動によるルート変更のせいで、パミール高原は本来のルートから外れ、大幅な寄り道になっていた。それもあって、ここに来るのは正直かなり面倒だった。
体調を崩して気弱になっていた時は、もうパミールは諦めようかと思ったほどだ。
でも諦めなくてよかった。
僕らは今、思い続けてきた夢の舞台の入口にいる。
ドゥシャンベからホーログの道はかなり酷かった。自転車が無事で何より。
出発前日、ホーログで丸1日休みを取ることにした。
せっかくのパミール高原、慌ただしいまま出発したくはない。
ゆっくり自転車を整備したり、食糧を買い込んだり、他のサイクリストから情報を得たりしているうち、
徐々に気分が高まって来た。
夕方にもなると、体の奥の方からいろんなものが込み上げてくる。
遠足前の子供の様な、初めて女の子と手をつないだ時の様な、そんな高揚感に体中が包まれて、
訳もなく大声で“わーっ”と叫び出したくなる。
丸一日の休みが、僕の気分をマックスに盛り上げてくれた。
ついに憧れのパミール高原だ。
折り紙で鶴をつくってあげたら期待以上に喜んでくれた可愛いホーログの子供たち。
旅を始めてからもうすぐ丸2年になろうとしているのに、
まだまだ世界にはこんなに僕らを興奮させてくれる場所があって、
そして、そこにいることで子供みたいにワクワクしている自分がいる。
そんなシンプルなことが、何故かとても嬉しい。
ついに明日から夢の舞台。
パミール高原に、いざ。
ホーログの宿パミールロッジには世界中のサイクリストたちが集まる。毎日5~10サイクリストくらいがいる凄いところ。情報交換にもってこい。