タンザニアからマラウィへの走行の一番のアトラクションは、
野生動物満載の国立公園内を通ること。
ライオンも生息する国立公園、ミクミ・ナショナルパーク内には幹線道路が通っていて、
入場料無料で公園内を走ることができる。
アフリカを旅した自転車仲間たちの多くもこの公園を通っていて、ライオンに遭遇してしまったりしている。
通常、ライオンは昼間に狩りをしないというし、沢山のチャリダーたちが無事に通過してきたけれども、
何が起こるかわからない。
なにせ公園内は50kmもある。自転車で爆走したところで、軽く3時間は走らなければならない。
楽しみであるような、怖いような。
東アフリカを走り始めたときから、この道を避けたい気持ちと、通ってみたい気持ちが
対立して、先の話だから今考えるのはやめようと思いつつ、ずっと気になっていた道だ。
とうとうその道を通る日がやってきた。
ひろに言ったら馬鹿にされるかもしれないと思って、言わなかったけど、
小心者の私は、大袈裟ではなくて真剣に、この日で人生が終わってしまうかもしれないと、
ちょっとした覚悟を持ちつつこの日を迎えた。
公園の入口に、「この先50km野生動物に注意!」という大きな看板があって、
いよいよその時がやってきた。
ここから国立公園といっても、別にフェンスで囲ってあるわけではない。
入口のちょっと手前には家々もあるし、呑気に道端にトマトを売ってたりする。
動物たちが来ちゃったりしないのかなぁ。
バケツ一杯で売られている(基本的にはただ置きっぱなし)トマト。道端に自分の敷地で採れた農作物がこのように売られている。
公園内に一歩踏み入れたその瞬間から、
私はキョロキョロと挙動不審者のように右に左に首を動かし、
足は尋常でないほど速く動かし、
一刻も早く公園内を抜け出れる努力を始めた。
楽しむ余裕などこれっぽちもない。
だって、ライオンに発見されたら、一体全体どうしたらいいの?。
ひろは寝ているライオンを求めて(寝ているライオン限定)キョロキョロしていたらしいけど。
草むらからカサッと音がする度に、心臓がドキんとする。
「ふー、鳥かぁ。驚かさないでよね。」
草を食べながらも、寝ながらも、排泄しながらも、
常に誰かに襲われる緊張感の中で生きている野生動物たちを尊敬する。
私は、野生には戻れない。
46時中、こんな緊張と共に生きるなんて私には到底無理。
公園を走り抜ける3時間ですら、この緊張感が続けるのは無理に違いない。
そんなことを思いながら、いやーな汗をかきながら、ひたすら漕ぎ続けた。
こんなかわいい手書きの象さんマークもあったり。
案の定、1時間と緊張感はもたなかった。
それもこれも、ライオンどころかシマウマもキリンもガゼルも出てこない。
っていうか、動物の気配が全くしない。
あんなにビビッてたのに、動物の気配が全くしない。
ビビッてる自分がアホらしくなるくらい、誰も出てこない。
というわけで、自然体で公園内を走り始めることができた。
後半にちょこっとゾウ、キリン、シマウマ、ガゼル、インパラやイボイノシシが出てきてくれた。
あるゾウとは2mくらいに接近して、お互いビックリもした。
幸運にもライオンとは遭遇せずに済んだ。
小象が1頭だけポツンとたたずんでいた。絶対近くに母親がいるはずと、ビクビクしながら見ていたのだけど、どうやらはぐれてしまった小象のよう。
私たちはンゴロンゴロのゲームサファリやケニアのヘルズゲート国立公園で、もっと間近に動物たちを見ているからかもしれないけど、
ミクミは景色も単調だし、動物たちとの距離も遠くて、ちょっと期待はずれな感じもあった。
それもこれも、無事脱出できたからいえることなんだけど。
とにもかくにも無事でよかった!