Apr,28,2009

窓はちゃんと閉めて寝た。
つっかえ棒までした。
それなのに起きたら窓は開いていた。
つっかえ棒は見事に窓と窓の間に押し込められていた。
列車の窓は地上から3m以上の高さにあって、はしごでも使わない限り外からは中を覗くことすらできない。
それに上下に動かすタイプの窓は上側しか開かなくて、窓口も60cmくらいしか開いていない。
ひろは窓のすぐ下に仰向けで寝ていた。
私ならともかく、ひろは音に敏感で、寝ていても変な音がすれば起きるたち。
それに貴重品のバックパックは少し窓から離れたところのヒロのすぐ隣に置かれていた。
それなのに私たちは全く気が付かなかった。
完全にプロの犯行だ。

想像すると怖くなった。
もし犯行中に目が覚めていたら・・・。
プロならば何か武器を持っていたに違いない。
目が覚めなかったことに感謝した。

犯人にとっては、予想以上の大収穫に違いない。
パスポートやTC,カード類から、米ドル現金沢山、一眼レフカメラ、携帯電話、GPS、ヘッドランプから衣類にいたるまで、泥棒市で高く売れそうなものばかり。タンザニア人の年収を考えれば、今頃大笑いが止まらないだろう。
せめてあなたたちには使いようのない日記帳や自転車用バッグだけでも返して欲しい。

私たちはモロゴロで下車するのを止めて日本大使館のあるダルエスサラームまで乗り続けることになった。午前1時30分に盗難に気付いてからダルエスに着くまでの10時間、
クレジットカードや銀行カード、トラベラーズチェックに携帯、不正使用されては困るものをストップしたいのに何も出来ないままボーっとダルエスに着くのを待つしかないのが悲しかった。ひたすら盗難について落ち着いて考えるだけの時間ばかりがあった。
いつもならもっと気をつけていたのに、とか、なんであの時・・・していなかったのだろう、
とか、悔やまれることばかりだったけど、
怪我もしなかったし、怖い思いもしてないのが本当に何より。

10時間後に着いたダルエスサラーム。
とにかく一刻も早くカード類をストップさせなくてはならない。
どこで国際電話をかけられるかも分からないし、手持ちの現金もない。
ようこが警察で盗難届の手続きをしている間、
ひろは炎天下の街中を駆け抜けて日本大使館へ駆け込んだ。
受付の人に「貴重品を全て失ったので電話を貸してください。」と切り出したら、鼻でフッと笑われた。
その後上司が登場し、白人並みに両手を広げて肩をすくめながら、「どうやって掛かった料金を計算しろというのですか。近くのホテルで国際電話をかけられるからそこに行きなさい。ここでは一切貸せません。パスポート再発行はポリスレポートがないと何も出来ません。」と冷たくあしらわれた。
パスポートも現金も失って、汗だくで走って駆け込んできた日本人に対して、だ。

声を大きくして言おう。
大使館のみなさん、あなたたちは私たちの払った税金で暮らしているんだぞ。
それに盗難に遭って助けを求めに来た人に向かって鼻で笑うなんて、はっきりいって人間のすることじゃない。
電話を貸せないのはやむを得ないとしても、それならそれで人としての言い方だってあるでしょ。
ひろは怒りに体を震わせつつ、それでも今はこの人たちを相手にしている暇はないと、再び街に駆け出した。
後から分かったことだが、大使館紹介のホテルで日本に電話をすると1分5ドル、街中で電話をすると1分0.5ドルだった。

一方、盗難届をもらう手続きをしていたようこは、警察から、盗難届が欲しければ1枚500シリング払えと言われ(もちろん払う必要のないお金だ)、警察相手に本気で切れていた。

悲しみと絶望の中、さらに追い討ちをかけられ続けた私たち。
人間不信になりそうだった私たちは、その後、ナイロビでお世話になった方のご紹介で、現地在住の日本人の方々にお世話になりました。
そして、初めてお会いするにもかかわらず、皆さんから本当に温かい言葉をかけていただき、私たち以上に心配していただき、何から何まで本当に親身になって助けていただきました。
その日の晩、お宅にお泊めいただくことになり、美味しい意日本食をご馳走になり、温かく心地の良いベッドの上で、死んだように眠りに落ちました。
前の晩の状況とその日の晩の状況との間に余りにギャップがありすぎて、何だか全てが夢だったみたいな不思議な感覚のまま、何ら現実感のないまま、長い長い一日が終わった。

地獄に仏とは、本当にこういう時のためにある言葉なのだと感じました。
この場をお借りして、本当に、本当に、心からお礼申し上げます。

幸い、ようこのパスポートやカード類は無事でした。
ひろのカードやトラベラーズチェックなども不正利用されずに済みました。
今後、装備の補充等のため、数週間ほど一時帰国することになると思いますが、
言うまでもなく、私たちの旅はまだまだ続きます。
すぐに旅を再開し、タンザニアにも戻ってきて良い思い出を作り直します。

これからも応援よろしくお願います!


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