「ここは冬山か?!」というほど寒いバスに10時間揺られて辿り着いたのは
リビア国境にも程近いエジプト西部の砂漠の中のオアシス、スィーワ。
バスが寒かったのは隙間だらけの古いバスだったのと、夜の砂漠を走ってきたせい。
その夜は特に寒かったらしく、寝袋に入っても寒くてブルブルしてしまったくらい。
冬の砂漠へ行く方は、防寒準備を万全に。
エジプトというと白砂漠や黒砂漠が有名。
こちらもとても魅力的ではあったのだけど、
シリア、ヨルダン、シナイ半島と、ずっと砂漠の中を走ってきた私たちは
若干砂漠にはお腹いっぱい気味。わざわざツアーを組んでまで砂漠に出かけるなんて
ちょっと面倒臭かった。
スィーワも砂漠なんだけど、ここには何故か行ってみたかった。
アラブ系エジプト人とも違う、ベドウィンとも違う、独特の文化を持っている
ベルベル系のスィーワンの街というのも魅力的だった。
でも何かコレ!といった理由があって、こんな辺鄙なところへやってきたのではなくて、
本当になんとなく。
砂漠へのツアーも特に行くつもりもなかった。
旅をしているとこの「なんとなく」が多かったりする。
そして、その「なんとなく」訪れたところがいいことが多い気がする。
これが呼ばれているってことなんだな、とよく思う。
夜行バスで早朝に着いて、一眠りして朝ご飯を食べようと町に出た。
スィーワで砂漠ツアーに行くならイブラヒムというガイドがいいよと聞いていて、
ツアーに行くにしろ行かないにしろ、とりあえずイブラヒムに話を聞いてみようと
思っていたら、ちょうどイブラヒムと一緒にこれから砂漠ツアーに出発するという
韓国人のカップルに遭遇。
彼らは人を集めるのになんと丸2日もかかったらしいし、
色々とリサーチした結果、そのガイドのツアーが良いと決めたらしく、
ちょうど2席空いているということだし、1泊2日3食付で100ポンド(1650円)
と安いし、これはチャンス!ということで、
ご飯もそっちのけでツアーへ行くことをあっという間に決断。
あれよ、あれよという間にジープに乗り込み砂漠へポンッ。
砂漠ツアーは運転の腕がいいガイドが必須。
小さな町を抜けたらあっという間に砂漠。
まあ、今まで見てきた砂漠とそんなに変わらないなぁと思っていたら、
あっという間に目の前全部が砂丘になった。
いや正確にいうと目の前だけじゃなくて自分の周りの視界360度が全部砂丘になった。
それはそれはあまりに美しくてぶったまげた。
シルエットの美しさに、砂紋の美しさにうっとり。
さらさらの砂丘でサンドボード。登りが辛い。
360度果てしなくつづく景色が砂丘なんて生まれて初めて見た。
昔、砂漠を写真でしか見たことがなかったとき、砂漠というものは
写真いっぱいに写る、あの美しい砂丘が果てしなく続くものをいうのだと思っていた。
インドで初めてラクダで砂漠ツアーに出たときに、砂漠は砂丘もあるけれども砂地が
多いことにガックリした。
ギリギリ砂丘だけが写真に写るように記念写真を撮った。
この旅で、沢山の砂漠を通った。
どれも砂丘はほんの一部だったけど、それはそれでどの砂漠も美しかった。
砂丘の砂漠だけが全てじゃないんだ。
砂丘のシルエットは柔らかかったり鋭かったり。うっとりする美しさ。
でも、
360度砂丘の砂漠は眩しいほどに美しかった。
そうそう、砂漠、これが私が出会ったみたかった砂漠。
一瞬でも360度砂丘に囲まれた景色が見れたら、それだけで満足だったのに、
ここのすごいところは車でびゅんびゅん走っても走っても、
ずーっと砂丘が続くところ。
さらにジープの屋根の上に乗ることができて、これがもうどんな遊園地のアトラクション
よりもアドレナリン大放出もの。
スキー場の上級者コースの急斜面より急斜面なところも
ジープは構わずハイスピードで上り下り。
屋根の上の荷台をしっかり握っていないとあっという間におさらばしてしまうであろう
スリリング満点さと、
遊園地のような造りものではなくて、
ありえないようなありえる景色が広がっている奇跡さと、
もうただひたすら絶叫。
興奮しすぎて夕日時にはシルクのようにさらさらな砂の上でグッタリ。
The Great Sand Sea。
世界でも最大級の砂丘が広がる砂漠の中ひとつ。
まだピラミッドは見てないけど、
エジプト一の感動はここに決まりかな。