エジプト本土では、90年代に頻発したテロの後遺症で、
未だに警察と一緒でないと自由に行動できない地域がある。
特にカイロ以南を自転車で自由に走るなんて、もってのほからしい。
だから元々エジプト本土を南下する予定はなく、エジプトの終着点はカイロと決めていた。
もちろんエジプト観光はまだまだ続くのだけど、自転車旅行はカイロでおしまい。
そしてエジプトの終着点ということは、3ヶ月続いた中東編のゴールでもある。
そう、カイロは僕らにとって一つの区切りをつける街。
古いヨーロッパのような建物とイスラムの建物がミックスしたカイロの街は歴史を感じさせるビッグシティ。
スエズからカイロまで135km。
この3ヶ月間で一番長く走ったのはアレッポ・ハマ間の約140km。
でもその時は緩やかな下りかフラットな道だった。
今回は、標高300m程度の小さな丘を越えなければいけないし、
スエズで1日休んだとはいえ、膝や腰は悲鳴をあげているし、
さすがに1日で走破は無理かなあ。
でも大都会カイロの近郊でテント泊っていうのも気が進まない。
それにカイロには美味しいものが待っているはずだし、自前の食料も底をついてきたし、
スエズで気力は回復できたし、何よりもゴールは目と鼻の先。
やれるところまでやってみよう!
とりあえずはお昼ころまで走ってみて、
それからカイロまで走り切れるか、途中で泊まるか判断すればいい。
ということで、朝5時前にいそいそと起き出し、夜明け前の薄暗い中をいざ出発。
すると、僕らの前には、素敵なご褒美が用意されていたのです。
パンが最高に美味しかったトルコ。いや、食べ物全部が最高だった!!
そのご褒美とは、一日中優しく吹き続ける”追い風”
向かい風はあんなに辛いのに、追い風は何でこんなに気持ちがいいんだろう、
たかが風で大袈裟な、と思うかもしれませんが、
激流に逆らいつつ上流に向かってカヌーを漕ぐか、
流れに身を任せてボーっと河口に向けて流されていくか、くらい違うのです。
お陰で、登り道だって平坦な道だって、思わずニヤリとしてしまうくらい快調な速度。
ああ、中東編の最後にこんなご褒美が待っているなんて、なんて粋な計らいでしょう!
7時間弱走っても平均時速は22kmを維持(普段は時速12km~17km程度)、
お昼前には100kmを越え、何と午後2時過ぎにはカイロに無事到着しました。
カイロで道に迷ったのも含めて1日の最長距離を更新、トータル142kmを走り切りました。
なにより人が素晴らしかったシリア。
そしてもう一つのご褒美。
それはガイドブックを暗記するくらい覚えた韓国料理!
カルビに冷麺にビール。この日ばかりはエジプトの物価を忘れ、日本の物価感覚で食べまくる。
えへ、ごちそうさまでした。
アップダウンの連続だったヨルダン。辛かったけど美しかった。
中東編の総走行距離約3510km、
自転車のトラブルはパンク1回こっきり、
出会った笑顔と親切は数知れず、
イスラムの優しさを体全体で感じた中東自転車編、無事に完了!
風に悩まされたシナイ半島だったけど、砂漠の景色が素晴らしかった。シリアからずっと続いた砂漠の景色だったけど、どこの砂漠も雰囲気が違っていてよかった。
そして次は東アフリカ縦断です。
東アフリカのルート選択は、情勢やら飛行機事情やら時期やら色々考えることがあるのですが、
それはおいおい考えるとして、しばらくは自転車を置いてエジプト旅行を楽しみます。