May,04,2013

「最後」にふさわしい場所ってあるのだろうか。
岬の先っぽ、一本道の終わり、そんなビジュアル的に分かりやすい場所の事だろうか。
でも旅の終わりってそういう物理的な、視覚的なものではない気がする。
どんな場所にゴールを設定しても、あと何年か旅の期間を延ばしても、その場所や時期に到達したことそれ自体で「ああ終わった」という実感が湧いてくるなんてことはない気がする。
旅という時間の過ごし方、旅という時間の流れ方、そういう愛おしいものに一つの区切りをつけて次のステージに進む準備ができているのか、という心の問題だと思う。
だから極端な話、最終目的地なんて決めなくたって構わないのかも知れない。

でもやっぱり4年半以上も自転車旅を続けてきたのだ。思い入れのないそこらへんの街で唐突に終わらせるのも何か味気ない。
これは卒業式みたいなものだ。
視覚的にも感覚的にも分かりやすいゴールに、最後を飾るにふさわしいと思える場所に、二人して颯爽と自転車で乗り付けて終わらせたい。


長い長い僕たちの旅も、ついに最終目的地が決まった。
まずはスペインを経由して、ポルトガルのロカ岬へ。
「ここに地果て、海始まる」場所、ユーラシア大陸最西端のロカ岬が、一段階目のゴールだ。

そこでようこの両親がスペインに遊びに来てくれることになったので、いったんリスボンに自転車を預けて一緒にスペイン観光を楽しんだ後、いよいよ最後の走行が始まる。
ポルトガルからスペインまで戻り、スペイン側のサンティアゴ巡礼路を通ってサンティアゴ・デ・コンポステーラへ。
世界中の巡礼者が目指すサンティアゴの大聖堂が僕たちの自転車旅のゴール、最終目的地だ。
巡礼路の全行程を走る訳ではないけれど、長い旅を続けてきた僕たちにとって、こんなに明確な場所はないといっていい。素晴らしいゴールだと思う。


最終目的地が決まったということは、残り何キロ・何日走るかが分かってしまうということだ
あと何日残されているのか試しに計算してみて、その日数の少なさに愕然とする。

だらだら過ごした20代の旅とは違い、30歳を越えて改めて旅に出てきた僕たちは、この旅の時間が永遠ではなく、だからこそ貴重で掛け替えのないものであることを、十分に理解して旅を続けてきたつもりだ。
だから勿体ない過ごし方をしたという後ろめたい思いは全くないのだけれど、それでもやはり残りの時間を具体的な数字として目の前に突きつけられるとショックが大きい。

朝起きてテントや荷物をバッグに詰め込、それを自転車に積みこんで街を出発する。
一日の終わりに二人でビールを飲み、明日のルートを地図で確認しながら眠りに落ちる。
すっかり日常となったそんな作業もあと何回で終わりなのかと、センチメンタルな気持ちが湧きあがってくる。


でもこれは旅の時間に限ったことではない。
学生生活だって、親と過ごす時間だって、将来子供ができたらその子供と過ごす時間だって、そしてようこといる時間ですら、全てが同じこと。
永遠に続くものは何一つなく、いつか終わりが来るものなのだ。

だからセンチメンタルに後ろを振り返る必要はない。
残りの日々をポジティブに、大切に、感謝を忘れずに、そして二人なりにめいっぱい、楽しもうじゃないか。
気がつけば50か国を越えていた訪問国も、残るはスペインとポルトガルの2か国だ。
さあ春のヨーロッパ、食のイベリア半島を満喫するぞ!




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