Feb,18,2013

バタバタと吹き乱れる向かい風と戦っている。
今日は未舗装とはいえ60kmの行程だから早く終わってゆっくりできるね、なんて威勢よく話していた今朝がだいぶ昔に感じられる。
車も通らない、電線も家もない、見渡す限り空と草っぱらの丘が続く。
追い風に乗って走ったらどんなに気持ち良いだろうと、向かい風を恨みながら吹きっさらしの広い大地をくるっと見渡す。
もうすぐキャンプ場があるはずのなのだけど、人工物の気配さえしない。
と、遠くに白い車が停まっているのが見えた。

近づいてみるとDOC(環境保全省)の車で、中からニコニコ笑顔のおじさんティムが、窓を開けて私たちのことを待っていた。
「荷物をキャンプ場まで持って行ってあげようか?」
どうやら風で苦しんでいる私たちが遠くから見えたのか、可哀そうに思って声をかけてくれたのだ。
「キャンプ場はもう少しなんですよね?大丈夫、自分たちで運ぶわ。ありがとう。」
とお礼を言って別れた。


今日の宿泊予定地はマボラ湖(Mavora Lakes)にあるDOC管理のキャンプ場。
森の中に簡易トイレと水道があるだけのシンプルなキャンプ場だ。
ファシリティーが必要最低限なのと、奥まった未舗装路沿いにあるということで、客も少なくて静かで、さらに焚火もOKということで、私たちにとっては理想のキャンプ場だった。
ブナの枯れ葉で敷き詰められたフカフカの絨毯の上にテントを張って、静かで幸せな空間を楽しみながら晩御飯を済ませたころに、車が一台私たちの前に停まった。
見覚えがあると思ったらさっきのDOCの車で、中からティムが二カっと笑顔を覗かせた。
「今日は向かい風で大変だっただろう、お疲れさん。ここ、いいところだろう?もっと先の方も見たかい?」
「ううん、見てないや。この先にも湖あるの?」
「ああ、まだまだ続くぞ。」と言って腕時計をちらっと見てから、
「あと30分くらいしたら仕事が終わるから、そしたら車で連れて行ってあげるよ」と言ってティムは車を走らせていった。

ずいぶんと前からの知り合いのように、ティムは私たちを車に乗せてプチ観光ツアーに連れて行ってくれた。値札が付いたDOCのマボラ湖マップもニカっと笑って「これ、あげるよ」って。
私たちがキャンプしている場所から北上すると見通しが良くなって、湖沿いに草原が広がっていた。
キャンパーが思い思いの場所にテントを張っていたり、キャラバンカーを停めていたりする。
広い空と、静かで大きな湖、赤く染まった山々が、ティムのフレンドリーさと相まって、マボラ湖の魅力を演出している。
「天気が良かったらここに何日か宿泊したかったね(翌日から雨の予報だった)」
「食料ももっと持ってくればよかったね。」
なんて私たちがボソボソ言っていると、
ティムが「ラジオで他のレンジャーに最新の天気を確認してみるよ。食料なら心配すんなって、俺が米をいっぱい持ってるからさ!日本人は米が好きなんだろう。明日の天気が良いといいねー。」
なんて気さくなティムなんだ。

ニュージーランドに来てからというもの驚き続けていることがある。
それはキウィ(ニュージーランド人)たちのフレンドリーさ。
ティムのように「あれ、この人って前からの友人だったけ?」というくらいぐーんと近づいてくる。
それでいて、ズカズカと踏み込まれるような不快さはなく、「えへへへ」とにこやかに隣にいるという自然な感じなのだ。


クライストチャーチの空港で出会った空港警察のロスは、自転車を組み立てていたらニコニコと話しかけてきた。カチっとしたユニフォーム姿なのに、片手にビールでも持っているかのようなフランクさで話しかけてくる。
「この近くにスーパーない?」って聞くと、「おう、今日は正月だからな、営業時間が心配だ。調べてきてやるから待ってな。」と言って事務所から詳細地図をプリントアウトして持ってきてくれた。
「今日はどこに泊るんだ?」と聞かれ、「明日は朝早く空港からバスに乗るから近くのキャンプ場にでも、、、」とモゾモゾしていると、「この空港は24時間営業だぞ、ここで寝れば?」と大胆にも空港警察という立場を忘れてお勧めしてくれる。
そして最後に「俺の連絡先だ。今度クライストチャーチに戻ってくるなら連絡してくれ。泊ったらいい。じゃあねー!」
って陽気に去っていった。


教えられたスーパーに向かっている途中で別のスーパーを見つけたので寄ってみた。
入った瞬間に閉店を告げられ残念な気持ち出てくると、車に乗った親切なオジさんが「別のスーパーなら開いているぞ」と、ロスが教えてくれたスーパーの事を教えてくれた。
オジさんは何だか複雑な行き方を教えてくれたので、オジさんの教えてくれた方法ではなく、ロスがくれた地図通りに進んでみることにした。
しばらく進むと、正月で閑散とした道路の先に車が停まっていて、太ったオジサンがポツンと立っているなぁと思ったら、さっきスーパーを教えてくれたオジさんだった。
「あらら、道を間違えちゃったんだね。この先まっすぐ行ってもいけるから大丈夫だよ。」
と丁寧にまた道を教えてくれた。わざわざ待っててくれたんだ。

翌朝のバスでは、陽気でフレンドリーな運転手のジョージが「クライストチャーチの中心部をまだ見てないって?それじゃぁ、いっちょ寄ってやろう!」と大胆にもバスのルートを変更して寄り道してくれた。
良く知っている近所のおっちゃんかっていうくらい、ジョージはご機嫌にいろいろと喋りかけてくる。
降りるときに「ジョージ、会えてよかったよ」と言うと、「ほんと?ほんとにそう思ってる?そりゃ嬉しいなぁ」って顔をこれでもかというほどくしゃくしゃにした。


あいにく、1泊目のクロムウェルは大雨だった。
雨が弱まったらテントを張ろうと思っていたらすっかりと夜になってしまって、「共同ダイニングでこのまま寝てしまいたいけど、きっとだめだよねぇ」と椅子を並べてちょっと横になっていた。
そこにキャンプ場のオーナーがダイニングにやってきた。
「雨がひどいね、テントをまだ張ってないって?それならこのダイニングで寝てもいいよ。でもマットとかちゃんと持っている?」
室内で寝かせてもらえるなんてなんて有難い!と感激していたら、すぐにオーナーが鍵を片手に戻ってきた。
「一部屋空いているからそこに泊りなさい。君の奥さんがこんなところで寝ているのは見てられないよ。」と、追加料金なしで部屋をあてがってくれた。
白いシーツがピンと張られたベッドが二つ並んだプライベートのツインルーム。
飛行機泊、空港泊が続いた体はベッドに吸い込まれるように眠りに落ちた。

「このスーパーの会員カード持ってる?」スーパーのレジのおばちゃんが聞いてくる。
持ってないと答えると、「この商品、会員だと割引があるのよ。」とごそごそと自分の財布から会員カードを取り出してピピっとレジにかざす。ウィンクして「サービスね。」って。


ある日キャンプ場に着いてテントを張っていると、恰幅のいいおじちゃんがビール瓶を持って近づいてきた。
「今日も沢山走ったんだろう?」とニカっと笑ってビール瓶を二本、ポンッと私たちに渡して、さらっと自分のキャラバンカーに戻って行った。
ゴクゴクっと飲みほして、笑顔で手を振った。

どの街でも、片方が買い物やインフォに行って片方が荷物番で待っていると、誰か彼かが話しかけてくる。「どこを走ってきたんだい?」「大丈夫か?なんか困っていることはないか?」

キウィたちは衝撃的にフレンドリーなのだ。
先進国でこんなに地元の人たちとふれあい続けるのは初めてで、びっくりしている。
自然を楽しみにやってきたニュージーランド。まさかこんなサプライズな楽しみがあったとは!!



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