Aug,04,2012

私たちの赤裸々な日常をつづったチャリダー日記、アルプス周遊編Vol.1。
今回は、イタリアのジェノバから、モナコ公国、フランスのカンヌ、グランドキャニオン(ヴェルドン渓谷)を経由して、フレンチアルプスの小さな街バルスロネットに到着するまでの走行日記です。
なお、GoogleMap、標高プロファイル、距離一覧表、簡単なホテル情報をNotesにまとめてありますので、そちらも参照して下さい。
イタリア編
フランス編

2012.05.26 Genova(Italy) 11km Camping Site

朝6時発のライアン航空でマドリッドからミラノへ。昨晩から空港に泊まりこんで自転車を箱詰めしたり荷物の重さをチェックしたりして、学生時代以来の完徹状態で飛行機に乗り込んだ。ライアンエアーは破格だけど、荷物制限やら事前準備やらが大変で精神的負担が大きすぎるので、やっぱりもう乗りたくない。もう快適さをお金で買いたい年頃になってしまったのだ。
最初はミラノから走り始めて直接フレンチアルプスに入ろうと思っていたのだけど、色々考えた結果ジェノバから地中海沿いを通ってカンヌの友人に会いに行くルートに落ち着いた。という訳でミラノからジェノバまで電車で移動することに。だったら最初からジェノバへ飛べば良いのだけど、そこがいつも勢いでルートをころころ変える僕らの悪いところだ。イタリアのローカル線は自転車を電車に乗せるのが簡単だし、チケット購入や乗り換えも周りの人が助けてくれてスムーズだった。イタリア人はすぐに大丈夫?と親切に声をかけてくれるので、とても印象がいい。
電車で爆睡していたらあっという間にジェノバに到着。さすがに徹夜開けのフラフラな状態でこれ以上走る気はしないので、食料を買い込んだ後はジェノバ郊外のキャンプ場に直接向かって今日はそこでおしまいにする。キャンプ場は予想外に高くてびっくりしたけど、今日は早く休みたかったのでやむを得ない。マドリッドで購入した新しいテントの具合をゆっくり確認する余裕もなく、ご飯を食べたらあっという間に夢の中。(ひろ)
2012.05.27 Genova – Finale Ligure 61km Camping Site

昨日は完徹でフラフラだったのでぐっすり良く寝れた。ヒストリカルでかわいらしい街を沢山通りながら走る。念願のジェラート休憩。どんなアイスでも自転車を漕いでると美味しいのだけど、やっぱりイタリアンジェラートは違うね。しかも大盛りダブルで1.5ユーロって、去年の北部イタリアと比べて物価がだいぶ安い。ジェラートがあまりに美味しかったものだからテンションがあがって昼ご飯はピザを食べようとピッツェリアに入ったのだけれども、残念なことに昼はピザを焼いていないんだって、pizzeriaって書いてあるのになぁ。仕方なしにニョッキとシーフードパスタにしたらこれはこれでとっても美味しかった。特にニョッキのプリプリ感とニョッキそのもののしっかりとした味、上品だけど濃いチーズソースに感動しながら、こんなことならイタリア走行をもう少し長く取ればと後悔した。
今日のキャンプサイトは車のサイトとは別で、静かで過ごしやすかったし、スタッフの人たちが明るくてかわいかった。去年の北部イタリアではあまり感じなかったけど、こちらは明るくてフレンドリーな人たちが多いのが嬉しい。(ようこ)
2012.05.28 Finale Ligure – Ventimiglia 92km Camping Site

今日も海岸沿いをひたすら走る。どこも似たような街並みだけどいい意味で生活感があってウソ臭くなく、雰囲気の良い街が多い。ランチ休憩はパンとビールを買って公園でピクニック。
ヴェンティミグリアのキャンプ場は老人の別荘地みたいな感じで、こちらは悪い意味で生活感がたっぷりだ。キャンプ場にピザ屋が併設されていたので、念願のイタリアンピザをここでトライ。美味しかったけど衝撃的な味ではなかったなあ。本当はカンヌの友人が少し手前の街の絶品ピザ屋を紹介してくれたのだけどタイミングが合わなくてそこには行けなかった。イタリアのレストランは夜7時とか8時とかに開くので、チャリダーとしてはなかなか行きづらいのが難点だ。あっという間のイタリア走行、明日は数キロ走ったらもうフランスだ。もう少し走って食い倒れをしたかったなあ。(ひろ)
2012.05.29 Ventimiglia – Border – Monaco – Cannes(France) 71km Friend’s House

調べていたルートでは国境付近は峠があるはずだったのだけれども、当日になって無駄に峠を登らなくていいルートをみつけてラッキー。あっという間にイタリアとおさらばしてフランス入国。フランスに入ると街々と街を歩く人々がバブリーな雰囲気になってきて、ちょっと汗臭い私たちはなんだか居心地が悪い。イタリアのほうがカフェやレストランに自転車を横付けして気軽に入れる雰囲気でいいかな。モナコに近付くにつれてやたらオープンカーが増える。しかもなんか乗ってる人たちが妙にお洒落。正確にいうとお洒落っていうか高いものをきっちりと着てると言った方が心地いいかも。渋滞で待っているとオープンカーの貴公子が話しかけてきた。「おお、なんと素晴らしい旅をしてるんだ!ファンタスティック」と大袈裟に言われた。きっと私も彼らの生活は想像できないけれども、彼らもまた私たちの生活を到底想像することはできないだろう。モナコを出てすぐ出会ったベーカリーのアップルパイとクロワッサンの美味しかったこと。パリッパリふわふわでフランスで一番美味しかった。道中でフランス人&スペイン人の夫婦サイクリストと出会う。旦那さんのハンドル周りに立派なスピーカー、ビデオ、GPS、サイクルメーター、防犯アラームなどなどと自転車とは思えないようなばっちり装備だった。観光客でウジャウジャしているニースの街中を抜けカンヌへ。あまりの眠気で途中のバス停で代わりばんこに昼寝。そしてとうとう高校からの友人の琴子宅へ。琴子が笑顔でマンションから出てきて迎え入れてくれて、なんだかどこにいるのかわからなくなった。嬉しくていっぱい喋って、琴子が用意してくれたカレーライスをモリモリ食べる。カレーライスを用意してくれるなんて、なんて粋なんでしょ。電気釜がからっぽになるまで食べつくした。(ようこ)
2012.05.30 Cannes 0km Friend’s House

カンヌ観光もそこそこに、まずは電車に揺られてマルセイユまでインドビザを申請に行く。片道2時間なのに一人30ユーロとは高い!この夏にインディアンヒマラヤを走ることは1年前から決めていたのだけど、インドビザをどこで申請するかが大問題で、色々調べた結果マルセイユで申請するのがベストということになったのだ。所要約2週間。ヨーロッパ、南米と走ってきた最近はビザ問題で頭を悩ませることがなかったので、こういう手間と時間のかかる手続きは面倒でしょうがない。幸い書類提出もスムーズに行ったし、約2週間後に訪ねる予定の友人宅にパスポートを直接郵送で返却してくれることになったので、受領だけのためにマルセイユに戻ってこなくても良くなった。さあ、やるべきことはやったので、後は天命を待つのみだ。
夜は友人お手製のイタリア料理。イタリア人と結婚した彼女のイタリアンは僕らじゃ真似のできない本格的な美味しさ。オリーブオイルをふんだんに使った生挽肉やサーモンのオードブルなんて絶品だ!(ひろ)
2012.05.31 Cannes 0km Friend’s House

今日はニースで美術館巡り。ニース現代美術館、シャガール美術館、マティス美術館とはしごする。
現代美術館はコレクションはそれほど多くはないものの、無料だし、ちょっと脳をリフレッシュしたいときなんかに来たい場所だった。シャガールとマティスは15年ぶりの2度目。シャガールの明るい作品はあまり他ではみたことはないのだけれども、明るいタッチの作品の色が好き。マティス美術館は以前のほうがいいコレクションがあった気がしたのだけど。マティスの作品は好きなのだけれども、ここでは1,2作を除きあまり好みの作品には出会えなかったのが残念。
旦那さんがイタリア人の琴子は美味しいピザ<をぜひ私たちに食べさせたいと、以前から目をつけていたイタリア人経営の美味しいと噂のお店へと連れて行ってくれた。ピザはシンプルな味が一番美味いってことを琴子に教えてもらう。ほんと、マルゲリータが一番美味しいと思った。はぁ、美味しかったー!!(ようこ)
2012.06.01 Cannes – Pegomas 16km Camping Site

楽しかった友人宅滞在もあっという間に終わって再出発。出発前に3人でカンヌのレッドカーペットの前で記念撮影を取る。小汚い僕らの恰好がこんなにも浮きまくる記念撮影ははじめてだったかもしれない。お昼御飯にと友人がおにぎりを用意してくれた。温かくて優しい味に二人でしみじみする。
カンヌの街を出たところでデカスロンを発見して寄り道する。デカスロンはQuechua(ケチュア)というブランドで安いアウトドア用の服やグッズを売っているフランス発のアウトドア版ユニクロみたいな店。広大な店内に物凄い品揃えで楽しかったけど、フランス発のブランドなのにデザインはどれもいまいちだし、クオリティも安かろうと言った感じだ。
今日はようこの体調がいまいち悪いので、すぐ近くの村でおしまいにする。久しぶりに友人に会ってはしゃぎすぎたのかもしれない。駐車場みたいで全然いけていないキャンプ場だったけど、うんうん唸っているようこの様子からすると明日も休みそうな気配。(ひろ)
2012.06.02 Pegomas 0km Camping Site

結局熱が出てお休み。そういえば琴子宅へ行く前から具合が悪かったのだけど、琴子に会えて嬉しかったもんですっかりテンションが上がっていて忘れてた。あんまり雰囲気のいいキャンプサイトでもないのに連泊は悔しいけど、仕方なし。具合が悪いととにかく寝れる。テントの中で一日中よく寝た。
そういえば、この新しいテント、結構居心地がいいかも。(ようこ)
2012.06.03 Pegomas – Comp sur Artuby 66km Camping Site

今日は日曜日なのでどこもかしこも店が閉まっていて、お昼御飯が全然買えない。結局ランチは高いレストランで食べる羽目になってしまった。炭酸水が4ユーロってボッタくりじゃない?でも淋しく二人で分けあったチーズバーガーはなかなか美味しかった。
今日の道は山を越え谷を越えの予想外にハードなルート。ようこは病み上がりだというのに可哀そうだ。でも途中の村々はおとぎ話に出てきそうなかわいらしさで通過するのがなかなか楽しい。予想外の暑さと登り続きで飲み水が無くなってしまったので、一般民家に水をもらいに行く。南米やアジアでは普通にしてきた事なのだけど、ヨーロッパだと無性に恥ずかしい気持ちになるのはなぜだろう。
Comp sur Artubyの入り口にキャラバンカーがたくさん停まっているキャンプ場みたいな場所があったので寄ってみる。実際はただのキャラバン用の無料駐車場だったのだけど、キャラバンカーの人たちも何台か泊まっていくようなので、僕らもここで一泊することに。水もトイレも芝生もあって、下手なキャンプ場より快適だ。(ひろ)
2012.06.04 Comp sur Artuby – Moustier ste Marie 46km Camping Site

朝から向かい風が強い。空の青い感じと雲が風で伸びてる感じとかもパタゴニアっぽい。遠くに小さな、中世のころから全く変わってなさそうな村が見える。ヨーロッパの凄いところは歴史的なものが近代的なものの中に大事に美しく保存されているところだと思う。どーんと現れたヴェルドン渓谷は予想していたよりもスペクタクルだった。ヨーロッパのグランドキャニオンというからもっとドライな渓谷を予想していたのだけれども、谷底に美しいエメラルドグリーンの川が流れていて、緑豊かだった。ヨーロッパのグランドキャニオンだってーってちょっと冷やかし程度にやってきたのだけれども、奥行きの深い、雄大な景色に寄り道して来てよかったと思った。気持ちのよいアップダウンな道が渓谷を色々な角度から見せてくれて自転車にもってこいのルート。ヨーロッパの景色はもっと箱庭的なものだと思っていたのだけど、大陸的な大きさを見せつけられた日だった。
今日のキャンプ場は11ユーロと格安で、木々もいっぱいあって落ち着く。最低限の設備だけだけれどもホットシャワーは無料であるし十分。キャラバンカーはもっと豪華なところが好きなのか、質素な雰囲気が好きそうな小さなキャラバンカーが数台と、テント客が何人かしかいないのもいい。スーパーがある最寄りの村moustiersがフランスで一番美しい村で賞を取ったことがある村ということで自転車で遊びに行ってみる。確かに可愛らしい村なのだけれども、ツーリスティすぎてあまり好みではなかった。(ようこ)
2012.06.05 Moustier ste Marie – Castellane 43km Camping Site

今日はヴェルドン渓谷の北側を走る。朝から登り道だったけど渓谷の風景がとても美しいし、車通りも少なくて楽しい走行だった。ちなみに途中にあった展望スポットからの風景はいまいち。こういう展望スポットは駐車スペースが必要なのでので本当のベストスポットを外していることが多い。こういうのも好きなところに好きなだけ停まれる自転車だからこそ分かることだ。後半は渓谷からは離れたけれども綺麗な川沿いを走る気持ちの良いルート。ヴェルドン渓谷に立ち寄るルートを取って大正解だった。
Castellaneは久しぶりの大きな村。美味しいパン屋はあるし、村のインフォには珍しくフリーWiFiが飛んでるし、大型スーパーはあるしで大満足。ちょうど緊急で日本とやり取りしないといけない用事もあったので今日はこの村で早めに終わることにした。本日のキャンプ場は7.9ユーロと破格の安さ。熱々のシャワーも付いているし大型スーパーは目の前だし、とてもお買い得だ。
夕方、カラスのような大きな鳥がギャーギャーと泣きながら歩いてテントに近づいてきた。近くに巣でもあったのかと慌ててテントを移動させたのだけど、再び近付いてくる。おろおろしながらテントを遠くに移動させても追いかけてくるし、追っ払っても全く逃げないし、なによりも目が真剣で怖い。他のキャンパーと相談して、きっとお腹でもすいているんだとろうと水やパンをあげてみたらパクパクと食べはじめた、と思ったら直ぐに喉に詰まらせて数分間硬直していた。体が大きいから大人かと思っていたら自分では食べることすらできない赤ちゃんだったようだ。親鳥とはぐれてしまったのだろうか。それにしてもこの鳥に翻弄されて、長い時間をかけて作っていた特製冷やし中華が台無しになってしまった。(ひろ)
2012.06.06 Castellne – Colmar les Alps 47km Camping Site

今日も暑い。毎日いい天気に恵まれていてラッキーともいうのだけども。地味に登り湖と森のなかを走る。ときどきかわいい村がひょっこりと現れるのも楽しい。フランスの田舎の村はかわいらしいところが多くて好きだ。それにこの辺のルートだけなのかもしれないけれど、フランスはキャンプ場がリーズナブルな上にノンビリできそうないい雰囲気のところが多くて、「今日ここに泊まっちゃおうか?」って話し合うことが多い。やめるにはちょっと早すぎるから泣く泣く進むとまたいい感じのキャンプサイトが現れるから心配無用なのだけど。今日もバゲットが美味しい。小さな村にも必ずパン屋さんがあって、朝早くから美味しいパンをせっせと焼いてくれるのが嬉しい。最初はバゲット一本が朝ごはんだったはずなのに、気づけば朝から一人1本食べるようになっていた。最近のお気に入りはバゲットにディジョンマスタードをつけてスライストマトを乗せて食べること。ディジョンマスタードの鼻にツーンとくる感じがたまらない。(ようこ)
2012.06.07 Colmar les Alps – Barcelonette 38km Camping Site

今日はAllos峠を越えるので朝早く出発。このあたりの峠は夏になると毎週決まった時間に車通行止めになって自転車だけに解放される。さすがツールドフランスの国、自転車のプライオリティが高い。Allos峠まではスキーリゾートの街々を通過していくのだけど、初夏のスキーリゾートはどこも見事なまでのゴーストタウン状態で、パン屋はもちろんカルフールなどのスーパーマーケットまで閉まっている。念のため昨日のうちに食料を買っておいたのでランチは食べられたけど、まさかヨーロッパでお店が見つからなくて困るなんて想像すらしていなかった。
Allos峠は傾斜も緩やかで快適な峠道。道端の草原からはマーモットがひょこっと顔を出し、ナキウサギのような声で鳴いている。結構臆病な奴で、自転車や車が近づくと全力疾走で逃げていく姿がなかなか可愛らしい。ゆっくりと峠を登り切ると、頂上では車で登ってきた人たちが拍手で迎えてくれた。そんなに大変な峠じゃなかったので少し恥ずかしいけれど、やっぱり「そんな荷物で凄いね君たち!」と言われると嬉しい気持ちになる。
思ったよりも早い時間に峠をクリアしたので、峠を下った先にある目的地の街には昼過ぎに到着。今日の街には大型スーパーがあったので興奮しながらチーズやワインを物色する二人。この街のパン屋もおいしいし、キャンプ場にはフリーWiFiがあるし、僕の左膝が腫れて痛いし、明日は休もうかな。(ひろ)
2012.06.08 Barcelonnette 0km Camping Site

今日は嬉しい休憩日。朝から雨が降っていて、昨晩のうちに休みにしようって決めておいて良かったと思った。別に仕事なわけでもないのに、明日漕がないっていう晩は二人ともテンションがあがる。お酒もいっぱい飲めるし、ダラダラ起きててもいいし、ぐうたら寝ててもいいんだもの。美味しいコーヒーを淹れて、パンを買いに行く。ここの町のパン屋のバゲットがフランスで一番美味しかった。帰り道にパクパクと食べるパリパリふわふわのバゲットって本当に幸せ。バゲット大好きなうちの母にぜひ食べさせてあげたいバゲットだったなぁ。休日ってことで昨日買った美味しいロケフォート(ヤギのブルーチーズ)とマッシュルームでオムレツを作ったら激うまで二人して唸る。チーズの風味もさることながら、たった2個しか入れなかったマッシュルームの香り高さの素晴らしかったこと。思い出のオムレツになりそう。(ようこ)

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