Oct,04,2011

一枚の写真にくぎ付けになった。
どこまでも青く澄んだ空、人を寄せ付けない荒涼とした大地、背後に広がる美しい雪山。
腹の底からオオオオオという声も言えない唸りのような音が無意識に出てくる。
ここに行きたい。ここを走りたい。今すぐここを旅したい。

ブダペストでお世話になった友人、オルガとバラージュのカップルは、
毎年夏にインドのレー・ラダック地方でゴンパ(お寺)の修復作業のボランティアをしている。
その素敵な生き様にもとても刺激を受けたのだけど、
ふらりに何気なく見せてもらったその地域の写真に、久しぶりに心が震えた。

ヨーロッパ旅も3か月が経とうとして、最近何かが心の中に溜まり始めていた。
ヨーロッパ旅は楽しい。自然は美しいし、どの街も歴史があるし、なによりも安全で便利で快適だ。
友人との再会も嬉しいし、街を案内してもらうのも新鮮だ。
でも、でもと思う。
これは今の僕らがしたい旅の形なのだろうか。

舗装路が好きだし、パンクは嫌いだし、冷えたビールはうれしいし、シャワーだって毎日浴びれた方がいい。
トラブルやハプニングを期待しながら走っている訳じゃないし、武勇伝や冒険譚は全くいらないし、アドベンチャラスな旅よりは安全で快適な旅のほうが好きな軟弱チャリダーだ。
でも、でもと思う。
この“快適で便利”なヨーロッパでは、トラブルも理不尽な事も起きないかわりに、現地の人たちと触れ合う機会もない。物を買うのも、自転車を電車に乗せるのにも、全てがスムーズかつシステマティックに進んでいく。
他の旅人との絡みも極端に少ない。チャリダーとすれ違ってももはや挨拶すらしないことも多い。
次から次へと観光スポットを巡り、安全便利快適なキャンプ場を転々とする、僕たち二人だけで完結した観光旅行だ。
短期間で効率よく観光地を回るバスツアーと、本質的に何ら変わるところがない。
別に観光バスツアーを馬鹿にしているのではなくて、今の僕らがしたい旅のスタイルとは違う気がするのだ。
このままヨーロッパを続けても、同じような、楽しいけれど慌ただしく次から次へと観光地を巡る日々が続くのは目に見えている。そう思うと少しげんなりする。

繰り返すけど、ヨーロッパの旅は楽しい。それは間違いない。
そしてこれからもスイスアルプスにフレンチアルプス、ピレネー山脈にスペインの街と、楽しみなイベントが目白押しだ。
ぜひとも走ってみたいし、そこを走ることを楽しみにもしてきた。
でも3か月の快適観光旅行で、そしてめまぐるしく押し寄せる観光スポットの波に疲れて、観光地巡りを“こなし”始めているのも事実だ。
今、これ以上ヨーロッパ旅を続けても、僕らの心は動くのだろうか。
せっかくの素晴らしいヨーロッパ。今の疲れてきた心でヨーロッパをこなすのはもったいない。

この3か月で徐々に蓄積していたそういう思いが、インドの写真を見たときに一気に噴き出してきた。
そう、今、僕たちは、心が震える旅をしたい。

あいにくレー・ラダック地方を自転車で回るには時期が遅すぎるので、来年の夏まで待たなければならない。
でも、今なら南米がいい時期だ。
今年の初めにパタゴニアを走ったのだけど、その時は事情があって一時帰国しなければならず、パタゴニア以外の南米を走り残していた。
そして詳しく調べてみたら、今南米を挟んでからヨーロッパに帰ってくるのも、ヨーロッパ編を完結してから南アメリカに飛ぶのも、費用的にはあまり変わらない。
そして何より、南米のことを調べているようこの顔が、久しぶりに見るくらい生き生きとしている。
僕も南米かあ、と思うとなんだか無性にワクワクしてくる。
ああ、そうだ。ワクワクする、そんな気持ちは久しぶりだ。
これはいい兆候だ。

というわけでヨーロッパには来年の春に戻ってくることにして、いったん南米のペルーに飛ぶことになりました。
こうやって僕たちの予定はくるくる変わる。
いつも行き当たりばったりだと笑われるのかもしれないけれど、
自分たちの心に真正面から向き合った結果なのだから、誰に何といわれてもいいさ。

いざ、南米の旅へ。

*****お知らせ*****
久し振りにPHOTOSのページを更新しました。
忙しかったヨーロッパではなかなか準備できなかったため、約5か月ぶりの更新です。
今回はインドネシア(バリ島)の写真及びヨーロッパ第一段としてノルウェーの写真をアップしました。
あわせて、トップページを飾った写真たち2011も更新しています。
順次ヨーロッパの写真をあげていきますので、こうご期待!

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