Sep,17,2011

スロベニア南西部にはカルスト台地が広がっていて、無数の鍾乳洞がある。
その中で僕らが選んだのは、世界遺産のSkocjan洞窟。
今まで行ったことのある世界の鍾乳洞を思い起こして、まあこんな感じかなとそれほど期待を膨らませないまま訪れたSkocjan洞窟だったけど、期待をはるかに上回る素晴らしさだった。
洞窟のスケールも、鍾乳石や石筍の美しさも、探検家気分を味わえる度も、今まで訪れた洞窟とはけた外れに素晴らしい。中国みたいに赤や青や紫でギラギラとライトアップすることなく、最小限のシンプルな明かりで見せてくれる演出も良かった。
内部が写真撮影禁止だったので、その美しさを伝えられないのが残念。
人生で一回だけ鍾乳洞を見に行くとしたら、ぜひともスロベニアの洞窟がお勧めだ。

さて、洞窟探検を終えた僕らは、翌朝の電車でスロベニアを後にしてウィーンに向かう予定にしていた。
でも、そろそろ寝るかという時間になって、突然、電車に乗るのが強烈に嫌になってきた。
電車に乗ること自体には全く抵抗はないのだけど、“明日は電車でウィーンに行きます”という事自体が何故だか気に食わないのだ。
とりあえずなぜ嫌なのか、思いつく限りの理由を並べてみるのだけど、どれも我ながら説得力がない。
呆れ気味のようこに“じゃあどうするのよ”と言われたところで、特に魅力的な代替ルートを持っている訳でもない。
やむを得ず、真っ暗なテントの中で、ヘッドランプをつけて地図やガイドブックを読み始める僕ら。


少し壊れてたりペンキがはげてたり。でも味があっていい感じ。

でも何が嫌なのか自分でも分からないのだから、特に妙案が浮かぶわけでもなく、地図を見てはため息をつくばかり。
そんな僕にようこもため息をつきつつ、それでも色々とルートを考え出してくれて、結局もう少しスロベニアを走るということで落ち着いた。
そんな決定を素直に喜んでいる自分に驚く。
なんだ単純にもう少しスロベニアを走りたいだけなのだ。

そう、スロベニアを自転車で走るのは楽しかった。
峠を越えていると、車の中から拍手してくれる人や、わざわざ窓を開けて声をかけてくれる人と沢山すれ違った。
ガソリンスタンドで休憩していると、“何だ自転車か?モーターつけた方が速いし楽だぞ。ガハハハハ”と、中東やアジアでよく聞いた突っ込みを入れてくる人がいた。
荷台に巨大なソファを積んで走っている車、綺麗な舗装路に突然ぽっかりあいた穴、旧ソ連圏の雰囲気が漂う無意味に巨大で古ぼけた建物、飾り気のないけど落ち着く街並み。

キャンプ場はキャンピングカーよりもテントの数が多くなり、久しぶりに落ち着ける雰囲気のキャンプ場が続いている。
ある街ではホテル併設のキャンプ場に泊まったのだけど、敷地内のどこにテントを張ってもいいわよと言われたりとか、作りかけなんだか修理中なんだか分からない中途半端な感じのトイレとか、新しいのに壊れているシャワーとか、そんなちぐはぐさがアフリカっぽくて、なんだか嬉しかった。


あ、テントはどこでも張っていいからね。テキトーな感じのお姉さんがゆるい感じで素敵。

そう言うとスロベニアが発展途上国かのようだけど、そうではない。
他のEU諸国と変わることなく、何一つ不自由のない、整備されて洗練されて行きとどいた先進国だ。
でもそんな先進国の風景の中にも、ほんの少しずつ、思わずクスッと笑ってしまうような温かみを感じられる。
こういう温かな感覚は、現地の人との絡みやカルチャーショック的なハプニングが全くない、洗練され切った西欧諸国を“旅行”をしているうちにすっかり忘れていたものだ。

そう、スロベニアには、まだまだ“旅”の香りが残っている。
だから、この国を終えて西欧“旅行”に戻ってしまうのがもったいないと、そう思って駄々をこね始めたのだ。
そんな風にようこに話したら、ようこも全く同じ思いを感じていたようだ。
やっぱり洗練された先進国は、僕たちの旅のデスティネーションではないのだろうか。


そういえば西欧世界では自転車で犬の前を通り過ぎたって吠えられることがなかったんだけど、スロヴェニアではよく吠えられる。そうだ、犬はむやみやたらと吠えるんだったけ。

結局その後、スロベニアをさらに4日間走って、途中の街から電車でウィーンに移動した。
首都リュブリャナを通過したり(「あれ、いつの間に街に入ったの?。あれ、いつの間に街を出たの?」というのどかな首都だった)、Upper Savinja Valleyという美しい谷に寄ってきたりもしたけど、何か特別なイベントが起きた訳ではない4日間だった。
だけどこういう贅沢な時間があってこそ、その国のことを体全体で消化吸収する事が出来て、はじめて「スロベニアを旅してきた」と言えるようになるのだと思う。
やっぱりこの時間の流れ方こそが、僕らの旅だよなあ。


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