パリのイメージは悪かった。
もしゃもしゃした小さな犬を引き連れ、小指を立ててオホホホホと笑いながらデミタスカップでコーヒーを飲み、英語を喋れるくせにフランス語で全て押し通し、道ですれ違う度に頭からつま先までじろりとファッションチェックされてフンと鼻で笑われる。
まあそれは大げさにしても、とにかくフランス語で押し通されるというのは、ようこをはじめ沢山の人から聞いていた話だったし、どうしても日本人がこぞってブランド物を買いに行っていた一昔前のイメージが先行するので、パリには偏見というか抵抗があった。
そんなスノッビーなイメージを持って降り立ったパリ。
最初の印象は、小便臭い!だ。
もちろん場所によるのだけど、ここまで激しく臭う街はこれまでなかったというくらい強烈だ。
そして犬の糞があちこちに落ちている。
ようこは15年前にもパリに来たことがあって、その時よりはマシになったというのだけど、それでも気をつけて歩かないと大変なことになる。
小便臭さと犬の糞。なかなかパリらしからぬ強烈な第一印象だ。
そんな第一印象のお陰で、スノッビーなパリのイメージは見事に覆され、逆に生活臭溢れる好印象な街になった。
パリジェンヌはちっちゃいときからお姫様として育てられたのだと思われる。
そして一番の驚きは、街の人たちがごく普通に英語をしゃべることだ。
中国人が中国語で押し通すくらいのレベルで、もっとフランス語で押し通されるのかと思っていた。
でも実際は、僕らがフランス語を喋れないと知るや、ごく自然に、嫌みなく英語に切り替えてくれる。
フランス語はとても美しい言葉だと思うので、それに誇りを持つのは当然だけど、
それはそれとして、通じない人にまでフランス語で押し通すのは、しかも英語が喋れるのにあえて喋らないのであれば、やっぱり感じは非常に良くない。
そんな“スノッビーなパリっ子”の象徴だったフランス語問題も、僕らのジェネレーションでは解決済みなのだと知り、ますます好感度アップだ。
どんどん好印象になっていくパリ。
そして決定的にこの街の好感度をアップさせたのは、パリジェンヌのかわいさだ。
ちょっとでも道を譲られないと露骨に不満げな顔をしたり声を出したりするところにパリジェンヌらしさが垣間見れたりもするのだけど、
もともとツルンとしたお人形さんみたいな可愛い顔をしている上に、おしゃれにはもちろん十分気を使っていて、耳に心地いいフランス語を操り、その上に笑顔ときたもんだから、街を歩いているだけで幸せだ。
これまで女性がきれいな国No.1はエチオピアだったのだけど、久しぶりにNo.1更新の予感だ。
パリに、そしてフランスに抱いていた悪いイメージはことごとく覆されていく。
なんだ、パリって楽しいじゃないか。