Oct,28,2010

街そのものは裏さびれているのに、ほんわか温かい空気に包まれていたアラベルディの滞在は、
素敵なゲストハウスに泊まれたこと、自転車走行日とはうってかわって晴れたことも手伝って、
なんだかアルメニアから去りがたい気持ちにさせられた。
そして何よりもこの街の滞在を充実させてくれたものは、アルメニア教会群だった。

アルベルディがあるデベド渓谷には多くの古い教会が点在する。
デベド渓谷は雨の多いところで、木々が鬱蒼と茂っていて、空気がしっとりと重く、
どこか日本に似ている。
青空も悪くないけど、どんよりと曇ったじめっとしグレーの空も、
この渓谷には何だか似合う。
じめっとしているお陰で、そこやここらは苔だらけ。
中央アジア、イランとずっと乾燥した地域を旅して来ただけに、
苔むした空間はとても新鮮だった。
苔が生えていて、草木に覆われているデベド渓谷の教会の写真を見た時、
ぐっと惹かれた。

数ある教会群のなかで、ハグパット修道院とサナヒン修道院を訪れた。
どちらも派手な造りではなく、ひっそりと静かに佇んでいた。
石の継ぎ目から草木が生えていたり、
地味な色ながら美しい苔のグラデーションでカバーされていたり。
しっとりとした重くて冷たい空気に包まれていたのが、またよく似合っていた。
立派な壁画があったり、美しい細工があったりするわけではないけど、
どちらの修道院もいつまでもその空間にいたい気持ちにさせる何かがあった。
地味な空間だけど、とても美しかった。

世界の色々なところを訪れてきたけれど、
日本的な侘・寂を感じる空間はここが初めてだった。
また一段とアルメニアが好きになった。
そして明日、この国ともお別れする。


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