Sep,13,2010

タジキスタンから飛行機に乗って一気にイラン北東部の街マシュハドまでやってきた。
イランに入ってまず驚いたのは、中央アジア諸国に比べて物凄くインフラが整っていることだ。
道路はつるつるピカピカに舗装されているし、トイレはどこも綺麗な水洗だし、電気は当たり前の様につくし、街のいたる所にごみ箱があるし、水道水だって飲める。
これだけインフラがきちんと整備されている国に入ると、心も体もやっぱり安心する。

中央アジアで大暴れしていた僕の体内細菌たちも、これだけ清潔な国なら長生きできないはずだ。
実際、マシュハドでは相変わらず体調が悪かったけど、
マシュハドからバスでイラン中央部のヤズドに移動したころには、すっかりお腹も治って元気になった。
さあ、改めて自転車再開だ。目指すは300km先のイスファハン!


見渡す限りなんにもない!シャツが風でパンパンになるくらい強烈な向かい風。

つるつるピカピカの快適舗装路を走ってヤズドの街を脱出。
とたんに見渡す限り何もない沙漠が広がった。
飲み物を買う店もない、道を尋ねられる人もいない、日陰になるような木もない、向かい風をさえぎる建物もない。
ただひたすらピカピカの舗装路だけが、一直線に地平線まで続いている。
たまに車の中から声をかけられる事はあっても、それ以外に僕らと絡んでくれる人もいない。
もうこうなると旅でも移動でもなくて、単なる修行だ。
最短ルートだからと安易にハイウェイを選んでしまった自分たちを恨みながら、
絶え間ない向かい風に顔さえ上げることも出来ず、ただひたすらペダルを漕ぐ。

途中、道路標識が作るわずかな日陰に身を隠して昼飯休憩をとる。
きゅうりの皮をむいて日なたに放置しておいたら、5分もしないうちに干からびてしまった。
そういえば、物凄く暑いのに汗ひとつかいていない。
いったいどれだけ乾燥しているんだ。


ヤズドの旧市街。この街では黒いチャドルをまとった女性が多い。

再び自転車に乗り込んで苦行を続けること数時間、ようやくガソリンスタンドを発見した。
やった、日陰だ!
冷たい飲み物にありついて、ようやくホッと一息つく。
ふと目の前の電光掲示板を見てみると、「現在の気温:47℃」と表示されていた。
47℃か・・・・間違いなく人生史上で最高気温だ。
数字を見てしまうと余計に暑く感じ始めて、互いに話す気力もなくなりボーっと座り込んでしまった。

強烈な向かい風の中で沙漠を走り続けること丸2日間、ようやく目の前に街が見えてきた。
さっそく宿を探すものの、当てにしていた安宿は閉鎖していて中級宿が一つあるだけだという。
しょうがないので恐る恐る値段を聞いてみると、1泊56ドルと宣告されてしまった。
目指すイスファハンですら1泊20ドルなのに、こんな何もない街で誰が56ドルも払えるか!
ついでにイスファハン行きのバスを調べてみたら、一人たったの2ドル(イランのバスはやたらと安い)、しかも1時間半で到着するという。
もう一気に走る気力がなくなってしまった。
ああ、もうだめだ。
イランの沙漠、参りました。完敗です。


ヤズドの旧市街には、バードギルと呼ばれる室内に風を取り込むための塔が建っている。

そんなこんなで、完走はさっさと諦めてバスに乗り込み、
あっという間にイランのハイライト、イスファハンに到着しました。
やっぱり真夏にイランの沙漠を走るもんじゃありませんね。


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