Sep,13,2009

8日間のナミビア&南アフリカのドライブを無事に終えた感想は、
「南アフリカって治安さえよければ最高の国じゃない?」の一言に尽きる。
美しい山々、美しい野生の花々、美味しいワイナリーにシーフード、ダイビング、サーフィン、サファリ、ウェールウォッチング、眺めてるだけでも美しい海。それに野生のペンギンだっている。
こんなに旅をしていて楽しい国はない。
カナダやネパール以来に、久々に住んでみたいとすら思った国だ。
治安さえ良かったら、の話だけれど。


アフリカ最南西端の喜望峰へ。真っ青で美しい海に囲まれていた。

超観光都市のケープタウンでは、
「来年のワールドカップに向けて私設警官を大増員しました」と誇らしげにパンフレットに書いてあった。
実際に街を歩いてみると、至るところに私設警官がワンサカいて、それがかえって物騒な感じを醸し出しているような、でも安全に観光できるような、微妙な安心感を与えてくれていた。
きっと、ワールドカップを控えた今が、この国を一番安全に旅行できるタイミングなのかもしれない。

でも、ワールドカップに向けていくら外観を整えても、
この国を覆っていたアパルトヘイトは、全く無くなっていないのだと強く感じる。
法律上や建前上はすでに存在しないのかもしれないけど、
今でも意識上の差別や、現実的な格差はもの凄いのだろうし、
残念ながら、それを埋めようとする努力はなかなか功を奏していないのだろうと感じた。


南ア産ワインは安くて美味しい!ワイナリーでは5種類のワインをテイスティングしてたったの180円!いやあ、たまらない。

一歩街の中心を離れると、電気も満足に来ていないようなバラックが立ち並ぶスラム街が広がっている。
どの街に行っても、中心部にきれいで大きな家が整然と立ち並び、それを囲むように郊外にはバラックが並んでいた。
地方のスーパーに行ったら、入口でローカルの人々に何か恵んでくれって服を引っ張られたりもした。
お店に入れば、白人使用者と黒人被用者という分かりやすい図式が成り立っているし、いわゆる知的労働者と肉体労働者とでは、呆れるほど分かりやすく”肌の色”が異なっていた。

ケープタウンには、ディストリクト6という、白人街を造るために強制的に破壊させられた黒人街があった。
その跡地は今博物館になっているのだけど、その展示内容には正直ガッカリした。
当時は誰がどこに住んでいたとか、そこでどんな生活をしていたとか、そんな展示ばっかりで、
まるで強制撤去させられた人たちの記念館みたいだった。
本当に知りたくて、そして本当に伝えるべきなのは、どういう経緯でこんな事態が起きて、どんな差別や偏見がこの国を覆っていて、どんなことが行われていたか、という点なはずなのに、
そこはオブラートに包まれたままで、黒人も白人もみんな不幸な法律の被害者でしたね、といった感じで誤魔化しているように思えて仕方なかった。
きっと、今でも差別や偏見や格差が無くなっていないから、それを正直ありのままに伝えるには、余りにも時機が早すぎるのかもしれない。

今回のアフリカ旅行中では、たくさんの南アフリカ人旅行者に会った。
みんなフレンドリーでナイスな人たちばかりだったけど、
彼らから南アフリカの話を聞いていても、積極的に差別とか偏見をしている訳ではないけれど、黒人も白人もみんな一緒で平等だよ、という空気は全く感じられなかった。

きっと、これから南アフリカがもっと発展していったとしても
どんどん格差が広がっていくだけで、治安だって決して良くはならないのではないかと思う。
こんなに素敵な国なのに何て勿体ないのだろうと、部外者の旅行者としては思ってしまうのだけれど。


テーブルマウンテンの上から見るケープタウンの街。右に写っているのはアブセイリングというロープで垂直に<だっていくアクティビティ。

この国のワールドカップへの意気込みは、中国のオリンピックへの意気込みにちょっと似ている。
とにかく開催前に事件を起こさないで、良くないところは隠して、無事開催して無事終了を!
でも、ワールドカップが無事に終わったら、いったい大増員された私設警官たちはどうなるのだろう。
スタジアム建設に携わった人たちに引き続き職はあるのだろうか。
そんなことまでFIFAや南ア政府は考えていないのかな。
とりあえずは無事ワールドカップ開催に向けて全力疾走するのみ。


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