Jul,22,2009

何度も何度も書くけれど、エチオピアのバス旅はハードだ。
エチオピアのバスは、朝6時に全国各地で一斉に出発する。
エチオピアのバスは、日没後は走ってはいけないという決まりがある。
エチオピアのバスは、完全定員制なので座席の数しか人を乗せない。
エチオピアのバスは、バスチケットを前日に購入することができる。

こうして決まりごとを並べてみると、結構立派な制度じゃんと勘違いしそうになるけど、
一番大切な決まりがスッポリと抜け落ちているのが、この国のミソ。

それは、座席指定とか座席予約という概念がないことだ。
最近登場したセーラムバスは座席を指定したチケットが買えるのだけど、
一般の公共バスには、そんな洗練された制度はない。
そう、座席は全て早い者勝ちなのだ。


羊や牛の群れに行く手を阻まれる。これだからやたらと時間がかかるんだよなあ。

そのため、朝6時出発のバスに乗るためには、朝4時に起きて、懐中電灯を片手に朝5時前にバス停に行って、そこで大勢のエチオピア人と一緒にバス停の開門を待たないといけない。
そして、朝5時の開門と同時に、みんなが目当てのバスに向かって、人を掻き分けるように、先を争うように、猛ダッシュを開始する。
その光景はバーゲン初日の開場風景のようで、とってもアホらしさ満天。
ああ何てアホらしいと思いつつも、彼らと一緒にダッシュしている自分が悲しい。
でも、ここで大人ぶっているわけには行かないのだ。
だって、万が一にもバスが満席になってしまうと、次のバスは翌日までないのだから。

ちなみに前日にチケットを購入していようがその日のうちにバスに乗り込もうが、そんなことは関係ない。
とにかく早い者勝ち、席を取った者勝ちなのだ。
いったい何のために前日にチケットを売るのか、さっぱり分からない。

そしてアディス行きのような人気路線は、朝5時10分頃までには全て座席が埋まる。
埋まったのならさっさと出発すればいいのに、あくまで出発は朝6時。だから出発までみんなで大人しく座っているしかない。
ああ、チケットに1から40くらいまでの席番号を振って座席指定制度にさえすれば、夜明け前からこんなに下らない席取合戦をしなくて済むのに。
なぜそれに気がつかない、エチオピア人!


また故障か!

さて、無事に席を確保さえすれば後はノンビリ優雅なバスの旅、という訳には当然いかない。
道はガタガタのクネクネで、頭を天井にぶつけそうなくらいの大ジャンプを座席の上で繰り返すことになるから、ゆっくり寝ている暇なんてない。
そしてバスは勿論ボロボロ。タイヤのミゾなんて何年前に消えてしまっていてケバケバになっているし、エンジンすら毎回直結してつなげるようなバスなのだ。
僕らが乗った公共バスは全部で7本。そのうち4本が途中でエンストしたりパンクしたりして、荒野のど真ん中でしばらく停車した。
7分の4の確率で壊れる公共バス。なんてこった。
挙句の果てに、夕方になると”今日はもうお終いだから明日の朝5時に戻って来い”、と名前も分からない町に放り出されてしまう。
そして翌朝も夜明け前に起きて、再び席取合戦をする。

エチオピアのバス旅は、ハードだ。
三十路を過ぎた僕らにとっては、この移動は予想以上に過酷だった。
バスを降りると毎回パンチドランカーのようにフラフラになっていた。
明日もバスで移動かと思うとブルーだったし、バスに乗っている間は(しかも1日12時間くらい乗っているのはざらだ)、まるで何も考えずに時間をやり過ごす特訓を受けているようだった。
もし、エチオピアのバスでも優雅な一時を過ごせる心の余裕があったら、理不尽なバス事情を軽く笑い飛ばせるユーモアを持ち合わせることが出来たら、
きっと逞しい大人になれるに違いない。
ココロに余裕を。そう分かっていても、なかなか難しいですよね・・・


hiro | Ethiopia
© yokoandhiro All rights Reserved. | 管理者ページ