ヨルダンを走るチャリダーにとって、避けることの出来ない最大の試練。
それは激しい登り坂でも、厳しい日差しでもなく、
King’s Wayのあちこちに潜む投石部隊。
僕らがヨロヨロと坂道を登っていると、辺りの子供たちがわらわらと集まってくる。
そこまではどの国でも一緒なのだけど、
King’s Wayには、僕らが通り過ぎるのを待って、後ろから石を投げてくる悪ガキがいる。
そういった投石部隊の存在は昔から有名で、何とガイドブックにも載っているくらい。
遊牧民であるべトウィンの子供にとっては、
群れから離れそうな羊の注意を引いたり、近づいてくる野犬を追い払ったりするのと
同じような感覚で石を投げるのかも知れないし、敵意のない単なる”お遊び”なのかもしれない。
だからといって、石を投げられて、”まあしょうがない”、なんて納得する訳にはいかない。
僕らはヨルダン入国前から、投石部隊とは断固戦うと決めていた。
必ず追いかけて、捕まえて、その子の親を探し出して、その子の親に叱ってもらおう。
父親の威厳が強いイスラムの国では、それが一番の薬のはずだ。
道の先にワラワラと集まる子供たち。果たして敵か味方か?
そしてその時が来た。
人めがけてというより、自転車めがけて投げてくる感じが多かったけど、
犬でも羊でもなく、明らかに僕らに対して石を投げてきた。
すぐに僕が自転車を降りて、本気で追いかける。
ところが、相手は身軽な子供で、僕は疲労困憊した30代。
到底追いつくことなどできず、追いかけながら日本語で怒鳴り散らして終わり。
それでも、悪ガキたちはビックリした顔で本気で逃げるので、
少しは抗議の意図が伝わったのだろう、なんてむなしいことを考えながら、
ぐったりして、またいそいそと自転車に戻り、ヨロヨロと坂道を登る。
投石部隊の数は1日数回程度と覚悟していたより少なく、僕らにも自転車にも被害はなかった。
それでも、石を投げられたらムカムカするし、
その度にいちいち自転車を降りて怒鳴るのは面倒臭い。
何よりも、道の先に子供たちを発見する度に二人で隊列を組み、
石を拾う悪ガキがいないか凝視しながら自転車を漕ぎ、
すれ違うときは一応ニコニコと挨拶して敵じゃないことをアピールし、
通り過ぎた後はミラーで子供の一挙手一投足を監視し、
何事もなく終わったときはホッと一息をつく
その繰り返しが精神的に疲れてしまい、子供たちを見るたびに暗い気持ちになってしまう。
ヨルダンの子供だって、そのほとんどはトルコやシリアと同じように可愛い子たちなのに。
そういえば昔チベットを自転車で走ったときも投石部隊に悩まされた。
僕らの今後の予定ルートにも投石王国が待ち構えているそうだ。
悪いことはしないから、お願いだから石を投げるのはやめてくれ~。
少し羊や犬の気持ちが分かった気がする。
犬だって辛いんだよなあ
そんな投石部隊の存在を差し引いても、
King’s Wayは太古の世界に迷い込んだような素敵な景色が広がるのでお勧めです。
バスは全く別の道を通るので、この道をゆっくり楽しむには自転車が一番。
ただし、これから自転車でKing’s Wayを走る方、投石部隊には要注意です。